ロシア・ウクライナ武力紛争:3人の「レジリエンス、再起の物語」

ウクライナ
2022.12.14

©ICRC

非常時には、多くの場合、現金を渡すことが最善の支援方法となります。市場が機能していてアクセスできさえすれば、現金があれば、最も必要なものを自ら判断して購入することができ、ほとんど何もかも失った人々が主体性と尊厳を取り戻すことができるからです。

赤十字国際委員会(ICRC)は、武力紛争やその他暴力事態下にある人々の緊急ニーズに対応することに加えて、長期的な復興を支援するために、現金の給付やバウチャーの配付を行っています。

2022年2月以降、ロシア・ウクライナ国際的武力紛争下においても、ICRCは現金給付により人々の暮らしの再建を支援してきました。以下は、そうした支援を受けて、戦闘下で懸命に生きる3人の住民の、それぞれの「レジリエンス、再起の物語」です。

ステパンさんの物語

ステパンは、子どもの頃から絵を描くのが好きで、学校の休み時間にはよくマンガを描いてクラスメートを楽しませていました。2004年には、初めて自分の絵を販売。以来、ステパンの作品は、生まれ故郷であるウクライナのヤブキノ村以外でも人気を集めています。

今年の3月下旬、ステパンは、民間人3人が亡くなり、十数人が負傷した戦闘の巻き添えにあいました。いくつかの銃弾の破片を浴びて、その一つが足を貫通したのです。ここ数カ月間は困難な日々が続きましたが、そうした中で心の逃げ場を与えてくれたのが、子どもの頃から好きだった絵画でした。

怪我によりこれまでのように収入を得られなくなったものの、ICRCの資金援助を受けて、絵筆を持つ日常を取り戻しました。

資金援助を得て、紛争下でも熱心に創作活動を続けるステパン

資金援助を得て、紛争下でも熱心に創作活動を続けるステパン ©Yevgen NOSENKO/ICRC

©Yevgen NOSENKO/ICRC

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スベトラーナさんの物語

スベトラーナ(75歳)は3月以降、食料などの非常用品を自宅の地下室に保管してきました。激しい砲撃があったときには、娘と一緒にその地下室で1週間を過ごし、二人とも無傷でいることができました。しかし、家は大きく損壊しました。

冬が間近に迫る中、スベトラーナは、ICRCから支給された現金で燃料用の薪を買い、迫撃砲により割れた窓を修理する予定です。「そうしないと、冬を越すことなどできません」と語る一方で、「この村には、私よりもずっと大変な被害を受けた人たちがいるんですよ」と他の住民のことも気遣います。「今年の3月に寒さが一段と厳しくなったときに、薪を運んできてくれた地元の方々には感謝してもしきれません」とコミュニティーが支え合っている現状について触れ、「現金給付が受けられれば、食料も買うことができて助かります」と話しました。

損壊したスベトラーナの家

損壊したスベトラーナの家 ©Yevgen NOSENKO/ICRC

スベトラーナは、現金給付を受けた30万人のうちの一人です。2022年9月には、ロバート・マルディーニICRC事務局長とキーウ界隈で面会しました。スベトラーナの他にも、数百万人が人道支援を必要としています。冬が到来し、人々ができる限り備えておくためには、はるかに多くの支援が必要です。

マルディーニICRC事務局長と会うスベトラーナ

マルディーニICRC事務局長と会うスベトラーナ ©Yevgen NOSENKO/ICRC

現金給付に加えて、ICRCは、負傷者や戦闘から逃れてきた人々の命を守るための医療支援も行っています。

ビラさんの物語

「私は、いつ死んでもおかしくない状況に置かれてきました。自宅の裏庭では、ミサイルがこれまでに6回も着弾したんですよ。それでも、仲間を置いてここを離れようと思ったことは一度もありません」

ビラは、南部へルソン地方ヴィソコピリア村にある病院の看護師です。ここ7カ月間は、付近の住民に医療支援を行っています。戦線がまだこの村に留まっていたころ、激しい戦闘下で、務めていた病院が損壊。それ以来、砲撃下を徒歩で移動しながら家から家へ患者を診て回りました。

務めていた地元の病院が損壊し、ビラは危険をかえりみず家々を巡回した

務めていた地元の病院が損壊し、ビラは危険をかえりみず家々を巡回した ©Yevgen NOSENKO/ICRC

ICRCは、10月にようやくビラのいるコミュニティーにたどり着くことができ、医薬品や衣類、食料、衛生用品を届けました。