国際人道法の尊重をバックアップする政治的仕組み

スイス・ジュネーブ本部
2024.10.23
風になびいているICRCのフラッグ

©ICRC

2024年9月下旬、赤十字国際委員会(ICRC)は、ブラジル、中国、フランス、ヨルダン、カザフスタン、南アフリカとともに、戦時の決まりごとを定めた国際人道法の遵守を政治的側面から支持する世界的なイニシアチブを始動させました。

このイニシアチブの目的は何ですか?

第一に、世界、地域、そして国内といったあらゆる規模で、政治における国際人道法の優先度を高めることです。第二に、同法の普遍的かつ忠実な適用のために武力紛争に関する議論を再構築し、国際社会が当事国に要求するレベルを今すぐ高める必要があることを認識することです。第三に、違反の防止や敵対行為に関するルールなどに特化した、国際人道法に関する議論を開始し、それらに対処するための明確な提言をおこなうことです。

このイニシアチブにおいて現実的かつ実践的な提言がおこなわれることが期待され、2026年末までに、戦時に人間性を保つための画期的な会議の場で結実することになっています。

2024年に採択から75周年を迎えたジュネーブ諸条約は、事実上すべての国が加入していて、国際人道法の名の下にきちんと尊重された場合、数百万人の命を救えると何十年にもわたって証明してきました。しかし、現在おこなわれている武力紛争は、壊滅的な人的被害をもたらし、多くの人が家を追われています。基本的なルールが違反されていることは深刻な懸念となっています。

今日、国際人道法は岐路に立っている、と多くの人が感じています。問題が大きくなっていく中で、世界は国際人道法を尊重するための強力かつ効果的な取り組みに向けて再び声を上げるべきか決めなければなりません。これら6カ国によって始動し、すべての国に参加を呼びかけているこのイニシアチブは、希望をもたらし、無気力感を吹き飛ばし、強力な推進力を与えようとしています。国際人道法の軽視は回避でき、克服されるべきなのです。

このイニシアチブはどのような問題と向き合うのですか?

現在の武力紛争において、人道上深刻な懸念があるとされる問題に焦点を合わせることを目指します。その中には、国際人道法に対する政治的関与の促進、予防活動、すなわち国際人道法の適用を強化すること、民間人とインフラの保護、新たな技術、医療従事者や医療事業の保護、国際人道法の平和への貢献、現代の海戦の課題などが含まれます。

このイニシアチブは、特定の紛争や状況に関係したものですか?

近年の紛争で国際人道法は大きな注目を浴びています。しかし、このイニシアチブは特定のいかなる紛争とも関係はありません。多くの武力紛争で、国際人道法に違反する傾向が見て取れます。国際人道法の尊重を促進するあらゆる取り組みを歓迎します。

また、今後提案または開催される可能性のある他の会議や取り組みとの関連性はなく、既存のプラットフォームや形式などに影響を与えるものでもありません。

何がきっかけでこの6カ国が立ち上がったのでしょうか?

現在の状況に対し、国際人道法への強力な投資の必要性を感じてくれたのがこの6カ国です。ICRCとともに、武力紛争中の保護を強化することに向かって国際社会全体に働きかけることで結束しました。それぞれの国は世界の異なる地域を代表していて、さまざまな地域的、国際的な機関や共同体のメンバーでもあります。

このイニシアチブには誰でも参加できますか?参加国はどのような役割が求められますか?

すべての国が参加を奨励されています。国際人道法の普遍性にもつながり、国際社会が国際人道法の規則と原則を支持する約束を改めて表明することが期待されています。この取り組みを始動させた国々は、別の関心事項を持つ国を招いて、関心を呼び込み、積極的な参加を促す重要な役割を担っています。


2024年10月に開催される第34回赤十字国際会議では、国際人道法に関する重要な議論がおこなわれます。ICRC は、同会議において提出された国際人道法に関する決議案を非常に重視しています。これらの決議は、国際人道法の尊重に向けた取り組みの緊急性を再確認する上での基礎になります。

今回始動したイニシアチブも、それらと並行して実施され、各国が国際人道法に取り組むためのさらなる方法を提案しています。

こうした中、日本政府は9月24日、国連ハイレベルウィークの関連行事である「人道要員の保護に関する会合」に出席。赤堀毅外務審議官がスピーチをおこないました。ICRCとの協力をはじめ、国際社会と連携して国際人道法の遵守の促進や人道要員の安全確保に協力する日本の姿勢が表明されました。詳細はこちら(外務省のサイトに移動します)