ベネズエラ移民の支援を強化

ベネズエラ
2021.06.26

©ICRC

パナマシティ/オタワ/ジュネーブ(ICRC)―ラテンアメリカ・カリブ海諸国などの中南米諸国で暮らす、難民を含むベネズエラ移民のニーズは未だ満たされていません。こうした状況に対応し、国際赤十字・赤新月運動は、今後3年にわたって、中南米17カ国で暮らすベネズエラ人、およびその受け入れ先のコミュニティーに保護と支援を提供するための対応を強化していきます。

新たな移住支援事業は、総額2.36億スイスフラン(約285億2100万円)を原資とし、短期・中期・長期の支援ニーズに対応するとともに、弱い立場に置かれた難民を含むベネズエラ移民に、医療や心のケア、保護サービス、収入を得る機会を提供し、またホストコミュニティーにおける受け入れを加速させるために支援を行います。

2018年以降、500万を超えるベネズエラ人が国を離れました。その多くが、依然として基本的なニーズを満たすことができていません。現在のコロナ禍や、それに関連したロックダウンや国境閉鎖により、すでに不安定な状況だったのがさらに追い込まれ、収入を得る機会を失い、差別の増加に直面しています。同時に、様々な障害にも出くわし、基本的なサービスの提供や保護を受けることができずにいます。

国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)のフランチェスコ・ロッカ会長は次のように語ります。

「現在、難民を含むベネズエラ移民は弱い立場に置かれ、基本的なニーズが満たされていません。その多くが、未だ食料や水、衛生環境、住む場所を確保したり、応急処置を受けたりすることができずにいます。さらに、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を含む医療や心のケアを受けたり、正規または非正規の仕事の機会を得たりするのも非常に難しい状況です」

「今週末に開催される『ベネズエラの難民や移民と連帯する国際ドナー会議』を前に、私たちは各国政府やドナー、国際機関、市民社会に対し、いかなる難民、移民も取り残されないよう、取り組みを強化するよう呼びかけます。今すぐ行動する必要があるのです」。

正規の在留資格を有しない難民を含む移民や武力紛争下にある地域を通って移動する人、入国者収容所で拘束されている人、さらには女性や子ども、高齢者、LGBTIQコミュニティーに属する人、障がいを抱える人など、弱い立場に置かれた人々が、暴力や社会的・文化的な障壁、経済的排除、外国人排斥などにさらされ、とりわけ深刻な状況下に置かれています。

大勢のベネズエラ人が国境を越えて移動している事態に対応するため、2017年から中南米諸国全体で6,900人を超える赤十字のボランティアとスタッフを動員し、誰もが安全と尊厳を持った扱いを保証されるよう、地域に根ざした、または全国的、国際的に活動する関係者のみならず、難民を含む移民とも連携して活動を続けていきます。

赤十字国際委員会(ICRC)のペーター・マウラー総裁は次のように語ります。

「助けを必要としている誰もが、無防備なまま一人取り残されることがあってはなりません。移民政策は常に人道と尊厳に基づき、国際的な義務に則ったものでなければならないのです。数え切れないほどの人々が移動の過程で行方不明になり、消息を知りたいと待っている家族に多大な苦痛を与えています。国家は、家族が離散したり、移民が行方不明になったり命を落としたりするリスクを防ぐために、あらゆる実行可能な手段を講じるべきです。そして最後に申し上げたいのは、収容することで移民問題は解決しない、ということです。移民にまつわる問題が生じた場合、収容は、最後の手段であるべきです。子どもは決して拘束されてはなりません」。

南北アメリカ大陸で展開する移民支援事業には、さらに多くの資金を必要としています。この地域における気候にまつわる危機が移民に影響を与える可能性もあることから、さらに環境の持続可能性や気候変動への適応と緩和にも対応していくことになるからです。

今なお続くベネズエラからの難民を含む移民の流出は、ラテンアメリカの現代史上最大規模の人口移動であると同時に、世界最大規模の避難行為でもあります。

赤十字による支援事業の対象となっている17カ国とは、アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、チリ、コロンビア、コスタリカ、キュラソー、ドミニカ共和国、エクアドル、ガイアナ、メキシコ、パナマ、パラグアイ、ペルー、トリニダード・トバゴ、ウルグアイ、ベネズエラです。