援助からレジリエンス構築まで:紛争時の食料確保を強化するには?

©Z. Burduli/ICRC
世界の何百万もの人びとが、十分に食料を確保するうえで日々問題に直面しています。危機への対応には、いますぐの行動と支援が必要です。武力紛争と治安悪化の影響で、家を追われた家族は1日1食でかろうじて生き延び、農業従事者たちは戦争の渦中で家族を養うため試行錯誤しています。
気候変動は、農作物生産への被害、コミュニティーの強制移動、食料流通の不安定化によって危機に拍車をかけています。一方で、世界の食品市場は不安定なまま、貿易の中断、通貨下落、そして輸入コストの上昇により、最も弱い立場にある人びとが食料を十分に確保できなくなりつつあります。
武力紛争があらゆる面から食料確保を脅かす
収穫した農作物が破壊され、農地に地雷が埋められ、家族が避難を余儀なくされると生計が立ちゆかなくなります。道路や橋が爆破されれば、市場へのアクセスが遮断されて生活必需品が不足し、たちまち人びとの生活は困難に陥ります。医療サービスの崩壊によって、子どもたちが栄養失調から回復するのが難しくなります。治安の悪化によって、最も助けを必要とする人びとに支援団体が救援物資を届けることを困難にします。そして、戦禍から抜け出したあと、生活再建に高い壁が立ちはだかります。
知識と経験に基づいたICRCの包括的アプローチ
ICRCは、紛争地において独自の活動を展開し、紛争やその他の暴力による影響を受けた人びとの保護・支援に努めます。食料不安の問題に取り組む際、私たちは多分野にわたる包括的アプローチによって、短期、中期、長期的な個人の需要とシステム上の問題の両方と向き合います。被害を受けたコミュニティーに寄り添い、最も支援が届きにくい地域の住民を最優先にします。各国の赤十字社、赤新月社と緊密に連携することで、現地に網羅されたネットワークを駆使して、より多くの人に辿り着くことができます。
具体的に何をしているの?
私たちは、戦時の決まりごとである国際人道法の遵守を促進することで、深刻な食料不安を予防し、食料危機が実際に起きてしまった際の効果的な対応を可能にしています。戦火の影響は、直接・間接的に食料安全保障に及びます。紛争当事者は、支配下にある地域の民間人の基本的なニーズを満たす責任があります。ICRCは、武力紛争に巻き込まれた人びとの人生を左右する組織や勢力との対話を通じて、将来的に間違った判断や行動に出ないようにします。民間人を手厚く保護し、支援を必要とするコミュニティーへのアクセスを容易にし、人道支援が安全におこなえるよう、働きかけます。国際人道法の普及と保護活動の実践によってそれらが可能になります。

©R. Monsalve/ICRC
私たちは最も支援の行き届かない地域で、紛争の被害を受けた人びとに対して緊急食料支援をおこない、栄養面やその他不可欠な公衆衛生のニーズに応えています。世界各地のICRCの活動は、各国赤十字・赤新月社の巨大なネットワークと連携することで実現しています。最も弱い立場に置かれた人びとが、度重なる食料危機に対処できるよう、食料や現金を支給し、さまざまな場面で栄養失調の予防や治療に携わっています。

©A. Synenko/ICRC
ICRCは、紛争の影響を受けた国において、食料と経済の安全保障のため持続可能な解決策を構築しています。世帯レベル、コミュニティーレベル、社会全体のシステムに至るまで、レジリエンスを強化しています。また、気候変動に対応しながら持続可能な農業を推進することに加えてや、家畜業や漁業など生計を立てる手段を獲得するための支援を通して、食料生産や、収入の回復をサポートします。持続性を高めるために、サービスの提供の仕方の改善や、灌漑に不可欠なインフラの修繕、または農業のバリューチェーンの機能改善、そしてコミュニティーがもっと地元の市場にアクセスできるよう能力を向上させることが大切です。体系的アプローチを採用し、地域機関の能力強化への並行投資を通じて、世帯レベルでの支援を補完します。

©ICRC
2025年、ICRCは以下の活動に取り組んでいます
- 220万人以上が十分な食料を得られるようにするための支援
- 約600万人がより持続可能に食料を生産するための支援
- 3,200万を超える人びとが水やエネルギー、衛生面で必要なサービスを受けられるようにするための支援
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