地雷なき世界を目指して -緊張が高まり、戦争が止まないこの時代に欠かせない国際人道法の遵守

スイス・ジュネーブ本部
2025.04.21

赤十字国際委員会(ICRC)、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)、および以下の各国赤十字社による共同声明。
デンマーク、エストニア、フィンランド、ラトビア、リトアニア、ノルウェー、スウェーデン

Landmine sign

©ICRC

年を追うごとに対人地雷による甚大な人的被害(地雷被害者の80%以上は民間人)が明らかになっています。民間人に被害が及んでいないように振る舞うことは、科学的根拠を否定するものです。対人地雷は兵士と子どもを見境なく攻撃し、紛争終結後も影響を残します。過去の武力紛争の経験から得たこと――それは、対人地雷を仕掛けた兵士たちが戦いをやめて立ち去った後も、そこに住む人びとは長年にわたって危険にさらされることになる、ということです。家族が生活を再建しようとした時、子どもたちが学校に通う時、農家が田畑を耕す時など、知らずに踏んでしまうことで負傷したり、命を落としたりする未来を作ってしまうのです。

武力紛争下の民間人保護の観点から、最近の中・北欧の国々による対人地雷禁止条約からの脱退宣言は、危険な後退を意味します。すでに何万人もの命を奪ってきた武力紛争や国家間の緊張の高まりが続くなか、安全保障の悪化と軍事的な脅威を根拠にして、条約脱退の流れが生じました。

歴史が明らかにしているように、対人地雷による無差別な攻撃は軽視できません。たとえ、当初は前線に埋設されていたとしても、天文学的な費用を充てて撤去されるまで、地雷を設置することで守ろうとしていた多くの人びとが死傷する事態が避けられないからです。

アフガニスタンの首都カブール出身で、金属の廃品回収をしているサレハ・モハメッドさんは、不思議な物体に足が軽く触れたことで爆発を引き起こし、人生まで破壊されたと語ります。「いとこが急いで病院に連れて行ってくれましたが、私の生活は二度と元には戻りませんでした。足を失い、家族を養うために働くこともできなくなりました。私は今、何かわからないものには絶対触れないよう、みんなに伝えています。無害に見えて、興味をそそられるかもしれませんが、命を奪われる可能性もありますからね」。

A man who lose his leg by landmine

©ICRC/Mohammad Masoud SAMIMI

2024年のICRCの記録では、アフガニスタンで起きた爆発性兵器による251件の事件で死傷した人びとのうち、434人が子どもでした。これは全犠牲者のうち76%に上りますが、実際の数はこれよりも多い可能性があります。

The diagram shows the most UXO-contaminated regions in Afghanistan.

色が濃い場所ほど、地雷や不発弾が埋まっている可能性が高いことを表す
©ICRC

対人地雷禁止条約は、対人地雷を包括的に禁止し、紛争時と紛争後、民間人に対する必要不可欠な保護を提供しています。こうした条約から脱退する国家は、命を救うための保護措置を蝕ぶリスクを生じさせ、非人道的兵器の根絶を目指す数十年にわたる世界各国の努力を脅かす危険があります。これは、現在の壊滅的な人道状況にさらなる後退をもたらし、長きにわたり民間人を死傷させるリスクにさらすものです。

対人地雷禁止条約を含めた国際人道法は、戦場での出来事と戦争の犠牲者から得た経験に基づき、暗闇が続く中で生きる人びとを守るために存在します。平時にこれらの規則を採択し、戦時や緊張が高まった時に条約を破棄することは、そもそもの存在意義を完全に理解していないことになります。敵対国がルールを尊重しないという理由での放棄は、危険な負のスパイラルに陥ることを意味し、その代償を支払わされるのは民間人です。

1997年に条約が採択されて以来、地雷の軍事的有用性は依然として限定的なままで、変わっていません。どのようなものであれ、言語道断なものもいくつかあることから、各国はこれら武器を禁止することに合意したのです。

人道上の義務を遵守することは、武力紛争に巻き込まれた人びとの保護に必要不可欠で、他者や他国の振る舞いに関係なく、全人類の利益にかなうものです。今こそ、人道的規範を弱めるのではなく、支持するときです。まったく先が見えない世の中で、国家間の緊張が高まる中ICRCが各国に対して求めるのは、許容しがたい人的代償をもたらす兵器を保有する国々の不名誉に繋がるような機運の醸成です。地雷のない世界を目指す国家は、地球上に8割存在します。ICRCは引き続き、そのビジョンが広く共有されるよう取り組んでいきます。