ハイチ:負傷者の急増により病院の機能が低下

ハイチ共和国
2024.05.23

©ICRC

ハイチの首都ポルトープランスの病院では、負傷者の急増によって医療物資(特に、医薬品、医療機器、病床、血液製剤)が著しく不足しており、医療従事者は緊迫したプレッシャーにさらされながら支援を続けています。既に一部の病院は、治安の悪化を理由に閉鎖を強いられました。このような事態を受けて、ICRCは現地の支援ニーズに応え、人々がヘルスケアと人道支援を受けられるよう努めています。

首都ポルトープランスでは、機能している公立病院はラペ大学病院を1つとなりました。その理事であるポール・ジュニア・フォンティラス医師によれば、2024年2月29日から4月15日にかけて、戦闘による負傷者を約200名受け入れてきましたが、急増するニーズによって、病床占有率は既に飽和状態にあります。また、フォンティラス医師は、医療従事者は命を救う活動のために、多大な犠牲を払っていると指摘しました。

ある15歳の少女は、頭を撃たれにも関わらず、複数の病院から受け入れを断られた末に、ラペ大学病院で引き受けられました。ラペ大学病院も脳神経外科の専門医が不在であるという緊迫状態にありましたが、最終的には受け入れが決まったといいます。貧しい少女のために手術費の300米ドルを寄付し、手術が決行されましたが、手術の数日後に少女は息を引き取りました。

治安の悪化に伴い数名の医療従事者は病院に来ることさえできないため、病院は本来の運営をできず、限られたスタッフや機材の中、運営を余儀なくされています。そのため、重症を負った患者は緊急治療を受けることができない状況です。

ICRCハイチ代表部の代表マリセラ・シルバ・チャウによれば、2024年2月下旬から武力紛争が激化して以降、人道状況は前例がないほど悪化しており、なかでもポルトープランスでは、数人が殺害、数百人が負傷し、数百万人が医療、きれいな水、食料、シェルターを必要としています。

かろうじて運営している他のいくつかの病院と同様に、ラペ大学病院もパートナーからの支援によって、なんとか病院運営を継続できている状況です。治安の悪化や即席のバリケードによる移動の制限は、医療を行うための物資の供給における障害となっています。

また、フォンティラス医師は、市場では入手困難となっている燃料、酸素、血液を供給する支援の必要性も強調しています。

ポルトープランスの拡大し続ける支援ニーズを満たすため、ICRCはこれまで、サンカミーユ病院、サンリュク病院、ベルナールメヴス病院、ラペ病院、シロエ医療観察センターを含む医療機関に対し、医療用衣服と手術用キット、個人防護具、サニピットやプロバイオティック製品を提供しました。

2024年1月以降のICRCの活動は以下のとおりです。

  • 約1,700人の患者を治療するために、27着の医療用衣服と6個の手術キットを6カ所の医療施設および応急処置の訓練を受けた医療従事者に提供しました。
  • 避難民に用意された5カ所の拠点とほか14地域において、給水車を用いて約52,800人におよそ653,000ガロンの水を提供しました。
  • 2,000人以上の避難民に衛生用品、防水シート、ソーラーランプを配付しました。
  • 地域の衛生を促進し、感染症や院内感染を減らすために、個人用保護具とともに 360キロのプロバイオティクスと340リットルのサニピットを5つの病院に寄付しました。
  • 頻繁な停電による病院の機能を支援するために、ラペ大学病院に3,000ガロンのディーゼル燃料を寄付しました。
  • 国境なき医師団にマットレス100枚を寄付しました。
  • 武力暴力の被害を受けた地域の27人に応急処置の訓練を行い、救急バッグ8個を寄贈しました。
  • 国立救急センター、国境なき医師団、ハイチ赤十字社救急支援部門のトレーナー14名に暴力の緩和について研修を実施しました。
  • ハイチ赤十字社救急支援部門に携わるボランティア25名に個人用保護具を提供。
  • 75人の患者に緊急治療を提供したハイチ赤十字社救急支援部門をサポートしました。
  • 貯蔵容量を増やすために、2カ所に容量1,700ガロンの水タンクを2つ寄贈し、設置しました。