コロンビア:武装集団との交渉の一環として特別協定の採択を要求
コロンビアは、現在進行形の武力紛争を8件抱えています。2023年には民間人数千人が巻き込まれ、行方不明者や避難者、性暴力の被害者、爆発性兵器の負傷者を生み、激しい砲弾や対人地雷、武装集団の脅威により自宅にとどまることを余儀なくされています。たくさんの少年少女や10代の若者が武装集団に関与していました。
現在、コロンビアでは、紛争当事者間の交渉で武力紛争の終結を目指した努力が継続されています。それにもかかわらず、実情としては、コロンビアにおける人道状況は依然として混とんとしています。昨年、異なる武装勢力間で領地をめぐる紛争が激化したことで、国内の複数地域の状況に変化が生じ、人道上の新たな課題が発生しました。
国家であるコロンビアと武装集団は、人道上の懸念を和平交渉の中心に据えなければなりません。武力紛争の影響を受けている人びとの苦しみを和らげ、国際人道法の下で紛争当事者が負っている義務を強化するような特別な協定を、交渉中に結ぶことができるでしょう。ただ、和平交渉が行われているかどうかにかかわらず、これらの義務は本来なら守られるべきなのです。
ICRCコロンビア代表部 ロレンゾ・カラフィ首席代表
そうした協定は、以下のような特定の問題に焦点を当てることができます。
- 公平な人道支援組織が紛争犠牲者に辿り着くためのアクセス確保
- 行方不明者、身元不明の遺体
- 少年少女や10代の若者に対して、徴兵をはじめ、敵対行為に利用したり直接参加させたりする行為
- 爆発性兵器の使用や存在、放棄
- 自由を奪われ拘束された人びと
- 医療サービスの保護
また、国際人道法の既存の条文に基づいた積極的かつ具体的な手段を提示し、武力紛争の被害者(特に民間人)の保護を主眼に置くべきです。
2023年の人道状況報告
公的な統計によれば、2023年に少なくとも14万5千人が個々に移動を余儀なくされており、前年比で18%増加しました。コロンビアの一部の県ではさらに加速し、ポリバル県では94%、カウカおよびプトゥマヨ県では50%超まで上昇しました。
加えて、大規模な人口移動は13%縮小したものの、その数字は依然として高く、およそ5万人が自宅から避難しています。こうした移動は一部の県に特に大きな打撃を与えており、プトゥマヨ県では最大の伸び幅を記録し、影響を受けた人びとの数は1,000%以上急増しています。ナリーニョ県も例に漏れず、コロンビア国内の避難民の52%が存在します。
自らの生活圏の中でさえ自由に避難できない住民たちがいます。恐怖と苦しみは人びとの生活を蝕み続けるものです。民間人にとって国際人道法の尊重は、難解な概念ではなく、むしろ、人生を左右する概念なのです。戦争の蛮行が軽減され、暴力が生んだ不安定な状況と痛みの只中にいる人びとにとって、真の救済を意味します。
ICRCコロンビア代表部 ロレンゾ・カラフィ首席代表武装集団同士の領地争いと、爆発物の存在により、約4万7千人が身動きが取れない状況下に置かれました。これは、2022年より19%の増加です。全体の44%を占めるチョコ県は、依然として危機的な状況です。他にも、カウカ県において2倍以上に膨れ上がり、アンティオキアでは2022年比で11倍増となりました。
昨年のICRCの記録によれば、異なる爆発物(対人地雷、発射性爆発物、制御性爆発物など)によって380人が直接的な被害を受けました。犠牲者の大半は民間人でした。また、武器汚染は、前年比27%減にも関わらず、コロンビア国内の新たな地域に拡大しています。爆発性兵器関連の事件が記録された73の自治体のうち、半数以上の自治体で2022年に同様の事件は起きていませんでした。直接的に被害を受けた人びとの中には、このような爆発性兵器に触れて負傷した者のみならず、その家族や、兵器がもたらす絶え間ない危険にさらされて避難または身動きの取れないコミュニティーも含まれます。
他にも、失踪や行方不明の問題は依然として憂慮すべき事案です。2023年、ICRCでは武力紛争や暴力に直接起因した行方不明案件を222件記録しました。これらは一部でしかなく、実際には、相当数が行方不明になっているとみられます。
また、この人道状況報告には、医療サービスへの攻撃に関する統計も記載されています。医療行為を司る公的機関The National Medical Mission Boardによると、511件の暴力行為のうち27%が武力紛争に関連するものであると公表しています。複数のコミュニティーが医療へのアクセスを断たれた深刻なケースもありました。さらに、過去5年間で最多となる9人の医療従事者が殺害され、そのうち5人は伝統療法を用いる人びとでした。
以上の数字は、状況の複雑さと苦しみの規模を示しています。住民が直面する厳しい現実を理解し、苦しみを和らげるために最大限力が尽くせるよう、武力紛争やその他暴力によって最も被害を受けた地域にICRCが存在することは、とても重要な意味を持ちます。中立と公平を掲げて人びとに寄り添うICRCは、2023年、コロンビアの15万人に救いの手を差し伸べました。